子どもの遊びと姿勢☆株式会社ピーエーエス〜野村寿子先生③〜

インタビュー

長年、座位保持装置を作り続けてこられた株式会社ピーエーエス。
前回に引き続き野村先生にお話をお伺いしました。ご自身のご経験を踏まえて、お子さんの遊びと姿勢について詳しくお聞かせいただきました。

活動の1コマ1コマが姿勢
インタビュアー:前回は座位保持装置について詳しくお聞かせいただきありがとうございました。今回は「お子さんの姿勢と遊び」について伺いたいと思います。前回野村さんは「姿勢は活動の一コマ」であるとおっしゃいましたが、姿勢と活動の関係性についてお教えいただけるでしょうか?

野村先生:「姿勢」って辞書を引くと体の構えとかって出てくると思いますが、その構えとは動きを伴う構えで、実はとても複雑なものなのです。
今、私はこうして座ってお話しているわけですけど、顔を動かしたり身振り手振りが加わったりしていますよね。「座っている姿勢」といってもただ座っている状態ではなくて、何かの動作の途中であることがほとんどです。そういった色々な活動の一コマ一コマを切り取ったものが姿勢なんだと考えています。

インタビュアー:なるほど。とても腑に落ちました。となると、子どもたちの遊びを一つの活動と捉えれば、遊びも姿勢につながりますね。

野村先生:そうなんですよ。本当に幼い頃っていろいろなことを一生懸命やるじゃないですか。鉄棒にぶら下がってみたり、滑り台を逆に登ってみたり。そういった活動にはそれに伴う姿勢がある。遊びと姿勢は切っても切れない関係なんです。だから子どもたちの遊びを考えるとき、姿勢というものも考える必要があるんですね。
インタビュアー:野村さんは「遊びを育てる」という本も出されていますが、「遊び」の本質は何だとお考えですか?

野村先生:以前、二歳半の孫と犬の散歩に行った時のことなんですけど、孫は最初、意気揚々と犬を引っ張って歩いてたんですね。でもすぐに犬が孫の行きたい方向を無視して猛然と走り出すわけです。そうなるともう子どもは必死ですよね。自分の能力以上のことを犬がしてくるわけですから。でも、そこで手を放すわけにはいかないことも、小さいながらわかっているんです。
こんなふうに遊びの中では、予期しないことが次々と起こるんです。だから子どもたちはいつも本気で遊んでいる。本気だから、鬼ごっこも全力で逃げるし、かくれんぼもドキドキするんです。本当にぎりぎりのところで踏ん張る経験を積み重ねるからこそ、子どもは遊びを通して成長するし、学んでいくんだと思います。
遊びの中で、人や物との関わりでコントロールできないもの、融通が利かないものがたくさん出てきます。だから面白いし、嬉しいし、がっかりするし、もう一回やりたいと思うし、もう二度とやるもんか!と思うんですね(笑)
ぎりぎりの中であそぶ
インタビュアー:大人の世界でも通じそうなお話です。

野村先生:大人のほうが自分でコントロールできないことばかり起きているかもしれませんね。私自身フル回転の毎日の中で「もう無理」って思うこともよくあります。でも無理なんて言えるわけない。だからこそ仕事を通して日々成長させていただいている。そのあたりは子どもの遊びと共通していると思います。

インタビュアー:どんな子どもたちにとっても遊びは大事だということですか?

野村先生:昔ふと思った疑問なんですが、みんなが経験していることを障がいのある子どもたちは経験しなくていいのかなと。確かに運動機能や知的発達などを部分的に切り取って、そこだけに焦点当ててっていうのも大事なんですけど、もっと普通のこと、たとえば落ちそうになるような段差を歩いてみたり、水たまりで足がぐちゃぐちゃになったりとか、そういった経験から得られるものも大事だと思っています。この時に感じた疑問はほとんど直感的な感覚だったんですけど、今ではこうした経験が必要だと確信しています。
そんなあたりまえの経験のためにも「姿勢」というものをまず考えるのは重要なことです。
感じて、動いて、元気に
インタビュアー:今後、やってみたいことなどあれば教えていただけますか?

野村先生:いつか保育園をしたいなと思っているんです。「遊びを育てる」という精神を柱とした保育園。一つ一つの活動の意味をしっかり感じてもらって、体の面でもコミュニケーションの面でもそれを意識してもらう。そして子どもも保育園に関わる大人たちも、しんどい時はしんどいと言えるようになって欲しいし、自分自分のことが大好きだと思ってもらえるような・・・まだそんな漠然とした構想段階なんですけどね。建物云々がどうということじゃなくて、「感じて、動いて、元気になる」場というのを作りたいなと思っているんです。
ピーエーエスはPerception and Action Spaceの略なんですが、まさしくそのままの意味なんです。

インタビュアー:そこにはスヌーズレンも設置されますか?

野村先生:そうですね。スヌーズレンは感覚を楽しむものです。その楽しさがもとになって心身の緊張がほぐれたり、気持ちが落ち着いたり、コミュニケーションがとりやすくなったりできるので、ぜひスヌーズレンも導入したいですね。障がいの有無にかかわらずご家族も一緒にみんながリラックスして笑顔になる。「心地よさから生まれる元気のシステムを作る」というピーエーエスの理念を形にできればいいなぁと思っています。
最初の設定は高く、ぎりぎりのラインで
インタビュアー:もう一度、姿勢と遊びについて話を戻させていただきますが、具体的に遊びについてどのように気をつければいいでしょうか?

野村先生:「遊びを育てる」という本を書いた頃、私は子どもたちにアクティビティを提供するのが得意だと思っていたんです。でも実際に子どもたちと関わっていた昔の写真なんかを見ますと、私は陰にまわって子どもたちの姿勢を支えているんですね。やっぱり姿勢とアクティビティは切り離せない。
例えば、子どもがゴミ箱に空き缶を入れるとき、手の動かし方よりも体をどう支えているかが大事だったりするんです。どういった遊びを提供してあげられるかという環境を見る目と同じくらい、姿勢を援助するポイントに気づくことが重要だと思います。

インタビュアー:ただ姿勢を補助して達成させてあげるだけではないのですか?

野村先生:「親や先生にやってもらった」と子どもたちが思わないことが大切です。子どもたちが「自分でやった」と思うこと、これが何より重要だと思っています。その調節は難しいのですけど、ぎりぎり失敗せずに達成できるように援助をするにはどうしたらいいか、を考えながら子どもたちに接していくことが大事だと思いますね。

インタビュアー:ご家族だけでなくリハビリに関わる療法士も気をつけたいことですね。

野村先生:短期間で高い効果を上げることのできる療法士は、その人の能力の高いところを適切に評価できる。最初から高いレベルのところから治療を開始することができているんです。
リハビリを学ぶ学生にも言うんですけど、現状の評価が治療効果を決める。最初の評価が低かったら到達するラインも当然低くなるし、遅くなるんです。
ぎりぎりの達成できる設定を見つける。姿勢も遊びもリハビリもそこがいちばんワクワクする。お互いが伸びることができるポイントだと思います。

インタビュアー:なるほど。本日は大変勉強になりました。ありがとうございました。

事業所情報

事業所名 株式会社ピーエーエス
住所 〒562-0031 大阪府箕面市小野原東1丁目3-21
電話番号 07272705210727270521
FAX 072-727-0522
サービス地域 関西圏及び福井・愛知・福岡の一部施設

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